ニールセン博士のHPガイドライン
Thursday, Jul 13, 2006 - 00:46 +09:00
Jakob Nielsen(ヤコブ・ニールセン)は、サン・マイクロシステムズ社の元エンジニアにして、Nielsen Norman Groupの現共同経営者。ユーザビリティ工学の開拓。とりわけWebにおけるユーザビリティでは世界を代表する専門家であり、Web制作者が「ユーザビリティ」を勉強するとき、必ず目にすることになる著名人です。
彼自信が運営するサイトにて'95年から掲載されているコラム『Alertbox』は(デザインはアレだけど)Web制作者のバイブルとして長年読み続けられています。Web標準で言うALAみたいなものかな?
『Alertbox』には日本語訳も用意されていますが、それはそれとして、今回取り上げるのは彼の著書『ホームページ・ユーザビリティ』(2002年)で纏められたホームページ(サイトのトップページね)におけるガイドライン。この名著を読み返すついでにサクっと抜粋してみました。
サイトの目的を伝える
- 会社名やロゴを適切なサイズで目に付く場所に置くこと
- サイトまたは会社が何を行っているかを、明確に示すタグラインを置くこと
- ユーザーに対して、そのサイトがどのような付加価値を提供し、競合会社とどこが違うのかを強調すること
- 優先順位の高いタスクを強調して、ホームページでの操作の開始点を示すこと
- 1つのサイトにつき、1つのページだけを明確な公式ページにすること
- 会社のWebサイト上では、その会社のWebに存在するもの全体を指す場合以外に「website(ウェブサイト)」という言葉を使わないこと
- ホームページをサイト内のほかの全てのページと明確に異なるデザインにすること
会社に関する情報を伝える
- 「About Us(私たちについて。会社情報)」「Investor Relation(株主・投資家向け情報)」「Press Room(プレスリリース)」「Employment(雇用情報)」などの会社情報をひとまとめにし、独立した領域に置くこと
- 会社の概要をユーザーに知らせる「About Us(私たちについて。会社情報)」と、商品、サービス、経営理念、事業計画、経営陣などの関連情報へのリンクをホームページに含めること
- 会社に関する報道記事を集めるのであれば、ホームページに「Press Room(プレスリリース)」または「News Room(ニュース)」というリンクを入れること
- Webサイトがそれ自体独立した存在でなく、顧客との接触点のひとつになるように、顧客に対して見せる顔を統一すること
- 連絡先情報を掲載したページへ行くための「Contact Us(お問い合わせ)」というリンクをホームページに含めること
- "フィードバック"の手段を提供するなら、そのリンクの目的と、それがどこで読まれるか(カスタマーサービス、ウェブマスターなど)を示すこと
- 一般公開するWebサイトに会社の内部情報(社員向けのイントラネットで掲載すべき情報)を含めないこと
- サイトで何らかの顧客情報を集めたければ、「Privacy Policy(プライバシーポリシー)」のリンクをホームページに含めること
- 自明である場合以外は、ウェブサイトがどのように利益を得ているかを説明すること
コンテンツの書き方
- 顧客に照準を合わせた言葉を使い、セクションやカテゴリーの名前は会社にとっての意味ではなく、顧客にとっての意味のあるものにすること
- 冗長なコンテンツは避けること
- 人々が理解に苦しむ才気ばしった言葉やマーケティングの専門用語は使わないこと
- 一貫した大文字小文字の表記とそのほかのスタイル規則を使うこと
- ページ内の特定のコンテンツが十分自明であれば、その明確に特徴づけられた領域にはラベルを付けないこと
- 項目が1つだけのカテゴリー、および、項目が1つだけの箇条書きは避けること
- 分割させたくない語句の単語間に区切りなしスペースを入れて、読みやすさとわかりやすさを確保すること
- 入力などが必須の場合は「Enter a City or Zip Code(都市名または郵便番号を入力してください)」などの命令形を使うか、または指示に適切な説明を入れておくこと
- 略語、頭文字、頭字語の省略しない形を示し、以降で出てくるときは省略形を使って記述すること
- 感嘆符の使用は避けること
- 大文字ばかりの表現は控えめにするか、またはまったく使わないこと
- 強調のためにスペースや句読点を不適切に使うのは避けること
実例を挙げてコンテンツを紹介する
- サイトのコンテンツを紹介するには、ただ説明するのではなく、実例を使うこと
- それぞれの実例には、その項目の詳細を記したページに、直接進むリンクを設定すること
- 項目がページの一部であるような、一般的なカテゴリーページへ進むべきではない
- 特定の実例の近くにより広いカテゴリーへのリンクを置くこと
- どのリンクが個々の実例に関する情報へ進み、どのリンクがそのカテゴリー全般に関する一般的な情報へ進むかをはっきりさせること
過去のコンテンツにアクセスできるようにする
- 最近までホームページ上で取り上げられていた特集に簡単にアクセスできるようにすること(過去2週間あるいは1ヶ月分程度)。そして、最近の特集の一覧を作り、アーカイブにも最近の項目を置いておく
リンク
- リンクを識別しやすくし、パッと見ただけでわかるようにすること
- リンク名として「Click Here(ここをクリック)」などの漠然とした指示を使わないこと
- 項目の一覧の後ろに「More...(続き)」などの不特定多数を表すリンクを置かないこと
- 訪問前のリンクと訪問済みリンクを色で見分けられるようにすること
- ページ上にあるリンクを示すために「Links(リンク)」という語を使わないこと。下線を付け、色を青にすればリンクだということはすぐにわかる
- リンクをクリックしても別のWebページに行かない場合(PDFにリンクしている、またはオーディオやビデオのプレーヤー、電子メールプログラム、そのほかのアプリケーションを起動するような場合)は、リンクをクリックすると何が起きるのかを必ずj明確に示すこと
ナビゲーション
- 主要なナビゲーション領域を特に目立つ場所に置くこと。できればページのメイン領域に隣接させること
- ナビゲーション領域内の項目をグループにまとめて、似たような項目が隣り合うようにすること
- 同じ種類のリンクを提供するために複数のナビゲーション領域を作らないこと
- ホームページ上にホームページへ行くためのリンクを作らないこと
- カテゴリーのナビゲーション選択肢に造語を使わないこと。カテゴリーはそれぞれが簡単に区別できなければならない。ユーザーがあなたの作った言葉を理解できなければ、カテゴリーを区別することも不可能だ
- サイトにショッピングカート機能がある場合は、そこへのリンクをホームページ内に含めること
- ナビゲーションでアイコンを使うのは、それが項目の種類(たとえば、新規項目、販売中の商品、ビデオコンテンツなど)をすぐに判別するために有効な場合に限ること
検索
- ホームページ上に検索ページに行くためのリンクを置くのではなく、検索ボックスを置いて、その場で質問を入力できるようにすること
- 検索ボックスは十分に広くし、ユーザーがそのサイトで標準的な質問を入力した際に語句が確認または編集しやすいようにすること
- 検索のための領域に見出しはつけないこと。代わりに「Search(検索)」ボタンを検索ボックスの右に置こう
- サイトで日常的に高度な検索機能を使うのでない限り、ホームページではシンプルな検索機能を提供し、(もしあれば)高度な検索または検索のヒントへのリンクを添えること
- ホームページ上に置いた検索機能では、初期状態でサイト全体が検索されるようにすること
- サイトの検索機能を使ってWeb全体を検索できるようにしないこと
ツールとショートカット
- 優先順位の高いタスクについてはホームページから直接アクセスできるようにすること
- ユーザーがサイトを訪れる目的と関係のないタスクに関わるツールは含めないこと
- ブラウザが持つ機能を再現するためのツールは提供しないこと。たとえば、そのページをブラウザの開始時に表示するように設定する、あるいは、ブックマークを設定するなどのツールは不要だ
グラフィックスとアニメーション
- グラフィックスはただホームページを装飾するために使うのでなく、実際の内容を見せるために使うこと
- グラフィックスや写真の意味がその文脈でわかりにくい場合は、それらにラベルを付けること
- 写真や図は表示サイズに適合するように編集すること
- ウォーターマークグラフィックス(テキストの下に敷く背景イメージ)の使用は避けること
- ホームページ上の特定の項目を注目させるためだけの目的でアニメーションを使わないこと。アニメーションはほかの要素の印象を弱めるため、明確な意図がない限りホームページで使うべきではない
- ロゴ、タグライン、見出しなど、ページ内の重要な要素をアニメーションにしないこと
- アニメーションのイントロを表示するかどうかを、ユーザーが選べるようにすること。アニメーション表示をデフォルトにしてはならない
グラフィックデザイン
- 文字ができるだけ読みやすくなるように、テキストと背景色のコントラストを高くすること
- 800×600ピクセルの画面で横方向にスクロールしないですむようにすること
- 最も重要なページ要素は、一般的なウィンドウサイズの"折り畳んだ上の部分"(スクロールしなくても見えている部分)に配置すること
- リキッドレイアウトを使い、異なる画面解像度でもホームページのサイズが調整されるようにすること
- ロゴは慎重に使うこと
ユーザーインターフェイスの部品
- ユーザーインターフェイスの部品を画面上のクリックしてもらいたくない場所に使わないこと
- ホームページ上で複数のテキスト入力ボックスを使うのは避けること。特にページ上部はユーザーが検索機能を期待する場所なので避けたほうがいい
- ドロップダウンメニューの使用は控えめにすること。特に、中に入れる項目がはっきりしていない場合は使わないほうがいい
ウィンドウタイトル
- ウィンドウタイトルの先頭は具体的な方法が含まれた語(通常は会社名)にすること
- ウィンドウタイトルに「.com」などの最上位ドメイン名を含めないこと。ただし、それが正式な会社名の一部である場合(Amazon.comなど)は例外とする
- ウィンドウタイトルに「homepage」という語を含めないこと。冗長なだけで何の意味もない
- ウィンドウタイトルにサイトの簡単な説明を入れること
- ウィンドウタイトルはせいぜい7、8語、文字数にして半角64文字よりは短くすること
- 商用ウェブサイトのホームページは「http://www.会社名.com」という形(または自分の国や商用以外の最上位ドメインに適した形)のURLにすること
- 米国以外の特定の国に強く結びついた内容を持つウェブサイトの場合は、その国の最上位ドメインを使うこと
- 可能であれば、サイト名の別の綴り、省略形、よくあるスペルミスについてもドメイン名を登録すること
- 別の綴りのドメイン名がある場合、どちらかを正式なものにし、そのほかのドメイン名を入力したユーザーはそこへリダイレクトされるようにすること
ニュースとプレスリリース
- 見出しは簡単明瞭で、しかも説明的なものにし、少ない語句でできる限り多くの情報を与えること
- ホームページで特集するニュースやプレスリリースの要約は、新たに記述して編集すること
- 記事全文へのリンクは要約でなく見出しにつけること
- ホームページ上のニュースが1週間以内に発生したものであるなら、頻繁に更新される速報でもない限り、記事の要約に日付と時間を記す必要はない
ポップアップウィンドウと中間ページ
- ユーザーがサイトのURLを入力したり、サイトへのリンクをクリックしたときには、"本当の"ホームページに行けるようにすること
- ポップアップウィンドウの使用は避けること
- サイトに各言語用のバージョンが多数あり、主に使用する言語が複数ある場合以外は、ユーザーが地理的な位置を選択するために振り分けページ(routing page)を使わないこと
広告
- 別の会社の広告はページの周辺部分にとどめておくこと
- 外部広告(別の会社のための広告)は、ホームページの中心的なコンテンツに比べてできるだけ小さく控えめにすること
- ページ上部の標準的なバナー領域以外に広告を置くなら、それが広告だとわかるようなラベルを付けて、ユーザーがサイトのコンテンツと混同しないようにすること
- サイトで定期的に組んでいる特集を提示する場合、広告の慣例的手法を使うのは避けること
「ようこそ」
- サイトに来たユーザーをうわべだけの言葉で歓迎しないこと。ホームページ上の大事なスペースを挨拶で埋めてしまう前に、そこにタグラインを入れることを考えよう
技術的な問題の伝達と緊急事態への対応
- ウェブサイトが停止したり、サイト上の重要な機能が利用できなくなった場合は、その旨をホームページではっきりと示すこと
- 緊急事態発生時にウェブサイト上の重要なコンテンツをどう処理するかの計画を立てておくこと
クレジット
- 検索エンジン、デザイン会社、お気に入りのブラウザの開発ベンダー、それにサイトで使用している製品やテクノロジーに対する謝辞でスペースを無駄にしないこと
- ウェブサイトが獲得したアワード(賞)を表示する場合は、適度な制約を設けること
ページの再読み込みと再表示
- ホームページを自動的に再表示してユーザーにページの更新を押し付けないこと
- 再表示を行うときには、ニュース項目など実際に変更されたコンテンツだけを更新すること
カスタマイズ
- ホームページ上に特定の既知のユーザー向けにカスタマイズした情報を表示する場合、初めて訪れるユーザーに対しては、同じコンテンツの一般的なバージョンを提供してはならない。代わりに、その領域用に異なるコンテンツを制作すること
- ホームページの基本的な外観(色づかいなど)をカスタマイズするための機能をユーザーに提供しないこと
顧客データの収集
- ホームページ上に登録のためのリンクをそのまま置かないこと。その代わりに、登録することの利点を説明するか、少なくとも説明へのリンクを提供すべきだ
- ユーザーに電子メールアドレスの入力を求める前に、発行物の内容と発行頻度を説明すること
コミュニティの育成
- ユーザーコミュニティのためにチャットやそのほかの討論機能を設ける場合、それらへの総括的なリンクは提供しないこと
- ビジネスサイトでは"ゲストブック"サインインは提供しないこと
日付と時間
- 日付と字間は、ニュース項目、ライブチャット、株式情報など、時間が重要である情報についてのみ表示すること
- 時刻を表示する場合は、コンピュータが自動生成する現在の時間ではなく、コンテンツが最後に更新された時間を表示すること
- 時間を表示するときには使用しているタイムゾーンも含めること
- 「p.m.」または「P.M.」など、標準的な省略形を使うこと
- 月は数字でなく名前(または月名の省略形)で書くこと
株式情報と数値の表示
- 株式情報では値動きの値だけでなく、変動のパーセンテージも載せること
- 株式銘柄略称が「IBM」などはっきりわかるものでない限り、略さないで書くこと
- 5桁以上の数値には、言語に合った区切り記号を3桁ごとに挿入すること
- 数値を表の列に並べて表示する場合は、小数点を揃えること
数が数だし、リストにしただけなのでお世辞にも見やすくはないけれど。大丈夫っ! 俺はすっごく勉強になった(違
あ、ちなみに。この本で一番凄いのは有名な米国32サイトの詳細な図付き解説なんで。ちょっと古いけど、今でもじゅうぶん通じるさ。いちおう宣伝しとくよ~。
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