IE7ってどうなの?

Wednesday, Aug 03, 2005 - 02:48 +09:00

XPに続く新OS「Windows Vista」と、Internet Explorerの次期バージョン「IE7」のβ版が公開され、リリースまでの秒読みに入った感があります。Windows Vistaに関しては、命名についてなにやら波乱や不満があるようですが、IE7に関しては業界として概ね好意的に受け止められているようです。

IE7の最大の特徴は、IEがこれまで延ばし延ばしにしてきたWeb標準への対応を協力に推し進めている点。特にCSS周りのバグ解消にそうとうな力を入れているようで、悪名高い「Peekaboo Bug」への対応、body要素以外での「background-attachment:fixed」のサポート、a要素以外の「:hover」 疑似クラスの対応、属性セレクタの対応、CSS以外でもpngのアルファチャンネルへの対応やobject要素のサポートなど、Web開発者をして「使えないブラウザ」と言わしめた多くの問題に対して精力的に取り組もうとしています。

この動きは1人の制作者として素直に嬉しく思う。けど前途は多難です。大きな問題は、「Windows Vista」の標準ブラウザとして発表されるだろうIE7が、いまだ根強い支持を勝ち得ている「Windows 2000」に対応しないとされている点。そして多くの期待を集めるWeb標準への対応、バグやセキュリティ面の対策が完全には為されないだろうという公式見解です。

IE7はWindows 2000に対応しない

要するに新OSへの移行を促そうとする企業戦略なのですが、実際のところ、不安定なXPよりも堅牢な2000を好むユーザーは企業を中心に相当数いるわけで、サポートが段階的に終了しつつある現在になっても移行はなかなか進んでいません。Vistaがどれほど優秀なOSかは不透明ですが、Macとは違ってバージョンアップの度に重くなっていくのがWinの常ですので、掛かるコストを考えればそれなりに規模のある企業において、急激な移行は考えにくいでしょう。

その点が、むしろIE以外のブラウザにとってシェア拡大への強力な後押しになる可能性を孕みます。Firefoxに至っては、これを絶好の機会と捉えている節がありますし... 「Window Vista = IE7」となるのなら、IE7の発表がIEのシェア回復へ単純に繋がる訳ではないということです。もっとも、これを機会にWeb標準をサポートしたモダン・ブラウザへの移行が進むことは期待できるので、開発者としては好意的なことに変わりはありませんけれども。

Web標準に完全には対応できない

IE7はIE6が疎かにしていたWeb標準を強力にサポートすることを明言していますが、現行のMozilla/Opera/Safariといった先駆者に比べて特に優れているかというと、そういう訳でもなさそうです。

具体的には、Web標準を広めようと働きかける「Web Standards Project」という団体が提供している、W3C勧告のサポート状況を調査するテスト「Acid2」に合格できずにいます。このことはCNETに詳しく書かれているので、一読してみると良いでしょう。いちおう以下に、記事の概要をまとめておきました。

IE7主任プログラムマネジャー : Chris Wilsonのコメント

IE7は、出荷時点ではこのテストに合格できないだろう

われわれは、IEが現在CSSのサポートで後れを取っていることは十分認識している。われわれは、Acid2テストを徹底的に調査し、このテストで明らかになるIEの問題を詳細に分析し、バグや仕様を確実に洗い出した。しかし、かなり大規模で実装が困難な機能がいくつかあり、それらすべてをIE7の最優先事項にすることはできない」(Wilson

Web Standards Projectのメンバー : Chris Kaminskiのコメント

われわれの希望と食い違う部分もあり、大半についてはBeta 2まで待たなくてはならないが、セキュリティとUIの仕様を主に重視したリリースとしてはこれは素晴らしいリストだ

だが、その内容以上に素晴らしいのは、これがMicrosoftの社外に提供されていることだ。私はかつて、『Microsoftとの協力』体制を1990年代後半に経験したことがあるが、このようなオープンな姿勢は、古いMicrosoftからの脱却であり、これが始まりに過ぎず、IE 7.5以降はより一層の改善が期待できる、との楽観的な見方をするのに十分な理由になると断言できる(Kaminski

Opera Softwareの最高技術責任者(CTO) : Hakon Lieのコメント

(IE 7の)次のIEが出るのは数年後のことであり、そしてこれはMicrosoftにとって、彼らがこれまで口にしてきたように、自分たちが本当に標準を大切に考えていることを示すチャンスだ。IE 7の開発に何年も費やしたのだから、Acid2テストに合格させるために数カ月余計に時間をかけても問題ないだろう(Lie

各ブラウザの対応状況

Opera
Acid2テストに合格する直前まで来ている
Safari
プレリミナリビルドの段階ですでに同テストに合格した
Firefox
Acid2を完全サポートするとしているが、いつ頃合格しそうかについては明らかにしていない

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