_Ro novelize
taleshift_7
--- 燃えろ...!
突き立てたファイアブランドが一際紅く揺らめき、
優に中型犬ほどはある鼠を消し飛ばす
蒼炎色の体表が一瞬で灰になる様を目の端に確認して、
ようやくロアンは緊張を解いた
地下水路に入ってから数時間
静謐な空気を唐突に破って襲い掛かってくる大鼠に、
ロアンは心底辟易していた
いったい何を喰ったらあんなになるんだ、と毒づくも、
想像すると怖くなって止めた ...どうせ、ろくなもんじゃない
今回ロアンに与えられた任務は、
先行したPTの補佐、および報告義務の伝達
並びに、近年ますます不穏さを増してゆくGH古城への、単独潜入任務だ
---と、いうのは建て前で
はじめからロアン単独での威力偵察を狙ったものだ
先行したPTはブラフ... ロアンをその気にさせるための噛ませ犬だ
普通に命じたところで、
彼がこんな任務を受ける筈の無い事は、教会も良く解っている
そこで彼と関わりがあるPTを放り込み、彼が協力するように"仕向けた"
--- まったく... 教会もあこぎな事をする
ロアンは胸中で溜息をついた
任務を遂行した後... 訪れるであろう厄介事に、呪われた気分すらする
はじめは、まだ良かった
与えられる任務も、ほとんどお手伝いに近い程度のもので...
定期的に訪れる教会関係者と、報告とは名ばかりな雑談をするだけ
それが気付けば、この有り様だ
思うに、律儀に任務をこなし続けたのが間違いだ
まだ楽なうちに幾度か失敗しておけば、こんなことにはならなかったのに
今では失敗が即、死に繋がるような任務ばかりやらされる
依頼もだんだん手が込んできて、断るのも難しい
ロアンは今日何度目かの溜息をついた
視線の先には階段があり、
奥に濃厚な闇の気配を湛えた昏い深淵が横たわっている
先は、まだ長そうだった