Ro novelize
taleshift_1
自らの無力さに絶望し、ロアンは去った
その数年後、彼の仲間たちはかつてない危機に晒されていた
再三の要請に応じ、万全の態勢で臨んだグラストヘイム調査の依頼
しかし、かの廃城の異変は当初の予想を遥かに越えて...
静謐な外観に反して、内部には混沌が溢れていた
静まり返る庭園に、突如出現した漆黒の騎士
相対するも敵わず。追い立てられるように逃げ込んだ先では、
狭い回廊に大量の不死者がひしめきあっていた
巨躯なる黒騎士は、不思議なことに追ってはこなかったが
彼らには進むよりほかに道は無かった
最初に倒れたのは、アサシンだった
年長の彼は仲間を守るために率先して前衛をこなし、
気が付けば孤立していた
それでも彼は良くやった
ひしめく不死者の間を縫うように駆け抜け、同士討ちを誘い、
時折放たれる弓矢に助けられて、たった一人で確実に敵を減らす
しかし素早い動きを誇るアサシンは、一撃離脱が身上
打ち付けられた鉄球に足をやられると、
終局はあっけなく訪れた
彼は、PTの支えだった
その彼が倒れた、その先の展開は悪夢のよう
彼が引き付けていた敵が雪崩のように押し寄せ、
ギリギリのラインで援護していたハンターが真っ先に呑みこまれ、
詠唱中のマジシャンが押し潰されるように亡者の群れに消える
残された聖職者は恐怖に目を見開き、足がすくみ、
必死で手を引くマーチャントに気付かない
2人には、戦闘力は無い
直後、彼女たちの視界に純白のマントが閃いた
鈍い振動
炎に包まれたグールが、マーチャントの隣りに倒れこむ
目を向けると、甲冑に身を包んだ戦士がたった一人で戦線を維持していた
閃く十字架
その戦士は亡者どもを葬りながら、群れの中心へと食い込んでいく
ほどなくして彼の姿は視界から消え...
強烈な光の乱舞が、ユーファの目を焼いた
.........
...
.
その戦士は、散乱する屍の只中に、たった一人で立っていた
マントは既に無く、甲冑は所々へこんでいて激戦を窺わせた
しかし彼は振り返り、確かな足取りでこちらに歩み寄る
その手に、まだ息のある仲間たちを引き摺って
放り出された仲間に、マーヤが駆け寄る
目の端に回復アイテムを用意する彼女を確認し、
ユーファは改めて彼を見た
傷だらけの甲冑... よく見ると、決して浅くない傷が垣間見えた
慌ててヒールを掛けようとする彼女を手で制し、彼は自ら回復をこなした
首から下げた聖なるロザリー。彼は、クルセイダーだった
彼は驚くユーファを一瞥し、淡々と依頼内容の変更を告げた
偵察任務の終了と帰還命令を事務的に告げ、踵を返す
携えたファイアブランドが淡い光を放ち、亡者たちを焼いていく
彼が壊れた兜を投げ捨てる様を、ユーファは呆けたように見つめていた
カラカラと音を立てる兜を忌々しそうに見つめた一瞬、横顔が確認できた
ユーファは硬直し、驚きに目を見開いた
その顔は、まぎれもなく---