Web制作者はアーティストではない

Wednesday, Oct 19, 2005 - 01:46 +09:00

よくよく誤解されるようだけど、Webを仕事にするということに、特別な才能は必要ない。求められるのは、当たり前のことを当たり前にこなせる能力であって、むしろ溢れる才能があっても活かせる機会は限られる。

というのも、Web制作は「制作」であって「創作」ではないから。Web制作者にとって、まず第一はクライアントの要求を満たすことであり、同じくらい重要なのが納期を守ること。完成品が芸術的に優れている必要はなく、むしろ綺麗なサイトでも納期を過ぎればNGとなる。つまり「限られた時間内で求められた仕様に仕上げること」さえできれば良い。芸術的なことは、あくまでコストと相談しての+αというわけ。

もちろんプロフェッショナルである以上、「商品」にはそれなりの品質が求められるわけだけど、その基準を満たすことに特別な才能は必要ない。人が好むデザインには必ず「法則」というものがあって、それに従いさえすれば、ある程度までは誰にでもできるものです。特に企業サイトは堅実さと実用性が命ですし。

ただし努力は必要

Webデザインに才能は必要ありませんが、「努力」は絶対に必要です。法則を知ることも、法則を使いこなすことも、応用したり組み合わせたりしてみることも、すべては絶え間ない試行と錯誤の延長線にあります。それを苦も無く続けられることこそ、才能と言うのかもしれませんけど、ね。

そして真に優れたデザインというものも、結局はその先にあるものでしょう。幾何学だけで芸術は産み出せませんが、幾何学なくして芸術は為しえません。

Kimberly Elamは著書『Balance in Design』において、デザインと建築において熟慮の末に適用されているのは、直観よりも蓄積された知識である場合がはるかに多いことがわかった ...と述べています。彼によると、著名なデザイナー、建築家、芸術家の多くは作品に対する幾何学の関係について明言しているそうです。

コストと品質

Web制作におけるコストは、9割以上が人件費。つまり社員の月給が¥200,000だとすると¥10,000/dayとして、3人で一週間かかるWebサイトは「10,000×7×3 = ¥210,000」となり、報酬がそれを割れば、赤字です。美麗なイラスト、完璧なシステム、優れたデザインには時間が掛かる... つまり、コストが余計に掛かるわけです。

こう考えると、企業としては秀逸なサイトを一ヶ月で作る人よりも、無難なデザインで一週間で仕上げる人の方が使い勝手が良いし、価値があるわけです。実際、優れた才能を持つ人は扱いにくいことが多いですし、企業としては飛びぬけた天才より勤勉な凡人を採りたいものです。

P.S.

短期的には損失を出しても長い目で見ればプラスになる仕事、ってのだと少し事情が変わります。たとえばブランディング・デザインとかですね。そういうのは(ある程度)採算度外視になったりもします。でも、それはあくまでイベント的なものであって、メインではないことに注目しましょう。単発なら自社で開発する必要もないわけで...

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